「“リントフリー”ワイパー」とは

「“リントフリー”ワイパー」をネットで検索すると、いくつかの興味深い情報が得られます。グーグルで検索すると、82,300件の検索結果が表示されます。また、米国材料試験協会(ASTM)のサイトで検索すると265件、米国薬局方(USP)のサイトでは737件の検索結果が表示され、このうちの3件については、薬剤調合・滅菌準備に関する<797>文書に含まれています。これだけ多くの参考文献やASTMおよびUSPからの引用があるのですから、「“リントフリー”ワイパー」は確かに存在するように思えます。

ところが、実際には存在しません。「リントフリー」と言う名称は誤りであり、「“リントフリー”ワイパー」という品目などは存在しないのです。これは一体どういうことでしょうか。

「リント」とは、布や糸の表面から分離される極細の短繊維を全般的に表す用語です。リントは、ワイパー製造に織布を使用することにより生じる結果です。これは、ポリエステルやナイロンなどの人工素材、綿やセルロースなどの天然素材、または水流交絡加工を施したセルロース・ポリエステルなどの合成繊維など織布の素材とは何ら関係ありません。織布を使用する限り、それに伴うリントの存在を避けることはできません。それでは、リントフリーと呼ばれる所以は何でしょう。

ドライ試験

クリーンルームで使用するための特殊ワイパーが最初に開発された当時、測定法はまだ十分に発達していませんでした。1980年台初頭、ワイパーを試験するための気中粒子測定法、いわゆる「ドライ試験」が開発されました。こうしたワイパーを機械で振るう測定法は、ワイパーから生じる粒子や繊維がほとんど放出されないことを示しました。同様に、一部のワイパーでは、拭き取り後の表面上に粒子や繊維があったとしても目視されたのはごく微量でした。このため、「リントフリー」という用語が生まれました。

ウェット試験

1980年代半ば、ワイパーを水または界面活性剤希薄溶液に浸漬し短時間軽く撹拌する測定法、いわゆる「ウェット試験」が開発され、それまでの状況がすべて変わりました。液中粒子計測器またはメンブレンフィルターに(ワイパーと接触した)溶液を通過させてから顕微鏡でフィルターを観察すると、突如として多量の粒子や繊維が目視できるようになったのです。水分がない状態のワイパーに付着した粒子や繊維は液中に放出され、検出や計測に使用できるようになりました。これにより、最高品質のクリーンルーム用ワイパーでさえも、リントの成分である粒子や繊維がある程度含まれていることが明らかになりました。興味深いことに、環境科学技術研究所が発行したワイパー試験に関する最新出版物(2004年)にはウェット試験に関する記述が含まれていますが、ドライ試験については記載されていません。許容できるウェット試験手順については、IEST-RP-CC004.3、6.1.3項と6.2.2.2項を参照してください。ウェット試験は、ドライ試験では検出できない粒子や繊維を「見つける」とともに、より大きい測定再現性も提供します。

残念ながら、未だに「リントフリー」という形容詞がクリーンルームの語彙から消されることはありませんが、「リントフリー」という特性は存在しないため、リントフリーとして販売されているワイパーにはご注意ください。

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