バークシャーは今日、高度清浄が求められる環境向け製品の開発・製造のグローバルリーダーです。しかし、1960年代半ばの創業時、バークシャーは文字どおり「ゼロからのスタート(“started from scratch”(※))」だったのです。

(※)“started from scratch” 「ゼロから始める」という意味の英語の慣用句。スクラッチ・ペーパー(メモ用紙)の製紙業から始まったバークシャーの創業の由来とかけている

バークシャー・ペーパー・カンパニー

のちにバークシャーを創業し、最高経営責任者(CEO)となるウィットモア B. ケリー (Whitmore B. Kelley)は当時、大学の学費を必要としていました。そこで、マサチューセッツ州西部の製紙工場で古紙を回収し、自宅に持ち帰ってメモ帳作りを始めました。

ケリーは、創業したばかりのこの企業を「バークシャー・ペーパー・カンパニー」と名付けました。廃棄処分となる廃棄物を利用可能な製品へと作り変えるこの企業は、米国でもっとも初期のリサイクル企業のひとつになりました。

バークシャー・ペーパー・カンパニーは間もなく、自宅の地下室を巣立ちました。鉄球で解体される予定だったある建物に目を向けたケリーは、この建物を購入・改造し、そこが最初の製造工場となりました。中古の加工機器を購入し、製造効率を新たに策定し、安定した顧客基盤を築きました。ところが、国の事情によって事業が中断されることになりました。

ケリーはアジアを回った後、マサチューセッツ西部に戻り、自らが残していった事業を引き取りました。その後、リテール保険会社やオフィス用品店など、以前の紙製品顧客の大半を取り戻し、地元製紙会社向けの裁断・梱包サービスにも進出しました。ボストンやニューヨークシティの近くという好立地にあったバークシャー・ペーパー・カンパニーの製品やサービスは、米国東部にもわたり、新しい顧客を惹きつけていきました。

低発塵の特殊紙

ケリーの会社は成長し、現在はバークシャーコーポレーションとなりました。自社研究室を立ち上げ、クリーンルーム用の使い捨て材料の標準的な試験方法を開発し、総合的な品質保証方法を確立しました。

1995年、バークシャーの品質管理システムは、国際標準化機構による世界的な品質管理システム基準であるISO9000に登録されました。現在バークシャーは、ISO9001:2015に登録されています。バークシャーでは、操作性能改善に重点をおいた品質トレーニングを従業員が受講できるよう、リーン生産方式トレーニングを導入しています。

ケリーは次のように述べています。

「事業で重要なのは、革新と継続的改善の推進、そして革新と意欲を維持するための誠実さです」

今日のバークシャーを見れば、ケリーの方程式が成功していることがわかります。この50年で事業を海外に拡大し、米国、欧州、アジアで製造と戦略的な調達を行い、米国、英国、フランス、日本、シンガポール、プエルトリコ、ブラジル、メキシコに販売拠点があります。現在では従業員も150人以上となり、製品ラインはワイパーやレンズティッシュから、フェイスマスク、グローブライナー、モップシステム、スワブ、文書化システム、粘着マット、クリーンルームソックス、消毒剤まで40種類に及びます。主な顧客は、半導体市場のほか、バイオテック、医療機器、製薬業界など、いずれも規制が厳しく特殊な無菌処理ニーズのある業界です。

バークシャーは非公開企業ですが、独立性の高い社外取締役会が管理運営をしています。ケリーは次のように説明しています。

「取締役は、事業への優れた見識と正確な判断を行い、当社が客観的な視点を持って進めるよう尽力しています。取締役会は、製造業、出版業、投資銀行、ビジネスコンサルティングなど、さまざまな経歴をもつ取締役で構成されています」